また四月がきたよ

四月が来ると
椎名林檎ファンやその他が
沢山そう呟きますね

原因のわからない離人感が
徐々に薄れてきたところ
また繰り返してしまうんだろうけど

感覚を説明するのは難しい
語彙不足だし言葉には変換しきれないし
それらは空っぽな脳内で無駄に飽和し始める
伝えられないから共感も批判もされない
感覚を文章で表現出来る人を尊敬しています

まだ蕾だと思っていた桜が
もう散っているのを知りました
花は散り際が一番美しいという誰かの言葉を
毎年思い返す春
私の生まれた季節
咲くのにも散るのにも戸惑い
風が強くて変化に対応しきれない
新しい環境は慣れない
何もうまくいかない
一人だけ置いていかれているような
不安に付きまとわれる
そんな私の嫌いな季節は
桜が美しいのが皮肉です

ひとつ前の恋人と出会ったのが
もう3年前の春なんだなぁと
ふと思い返していた
3年間 想っていたのだ
あれから3年も過ぎたのだ

iPhoneのカメラロールには
二人の写真が沢山あった
元彼はよく写真を撮る人だった
そして写真を撮るのが上手だった
何をどの位置からどのタイミングで撮影すれば対象が映えるのかというのを
判断して実行するのがとりわけ早かった
写真を撮るのが下手だねと
私はよく言われていたものだ
同じ対象を二人で同じ位置から撮影しても
やっぱり元彼の撮る写真のほうが素敵だった
元々持つセンスの問題なのかもしれない

二人の写真を見返すと
二人は本当に楽しそうに見える
付き合っている時も 別れたあとも
二人はこれからも何時でも会えるんだろうと私は思っていた
別れてからも私は完全に元彼に依存していた
憎くて愛しくて
それでもいいと思っていたし
そうすることしか出来なかった

私は二人の笑顔をひとつずつじっくりと眺めて
ひとつずつゆっくりと消した

元彼の笑顔も声も癖もまだ覚えているんだけど
不思議なもので
元彼と居た私というものがうまく思い出せないでいる
確かに楽しかった記憶や苦しんだ記憶はあるのだけれど
まるで全てが夢だったような気がして
全てに実感がない
あんなに呼んだ名前を呟いてみても
不快な違和感しか残らない
私は本当にこの人と居たのだろうか
本当にこの人が好きだったのだろうか
それを証明出来るのはもう
iPhoneのカメラロールに残る写真のデータしか無かった
私はそれを消した

実感が無いということは
私にとってもうそれだけ遠い昔の出来事になったということなんだろう
ただ楽しかった苦しかったという
漠然とした記憶でしかない

それはそれで寂しいことかもしれないけど
それ以上に嬉しいことで
それはずっと望んでいたことでもあった
元彼という依存から抜け出すためだけに
だいぶ時間を費やしてしまったけどね

何度も何度もさよならをしたけれど
本当にさよならするときって
何も言わないのかもしれない
経験が浅いからよくわからないけれど


今の恋人は素敵な男性です
真面目で努力家で一途で
感情で動くタイプではないけれど
理屈っぽくもない
短気なようで寛容的
控えめだけど行動力がある
表現はしないけれど
感性が豊かな人
あと
ニカッと笑ったときの八重歯が可愛い

恋人が素敵なだけに
正直これまで以上の劣等感に
苛まれてはいる
それはそれでつらいけど
そのおかげで今まで以上に
自分自身を見直せるようになったし
向上心がちょっと芽生えた
どうでもいいってのがちょっと減った
ちょっと負けず嫌いになった
今の恋人が嫌うメンヘラから脱した
ダメなりに進歩出来ている気もする 
そりゃあまだまだだけどさ
私がプラスになれたから
今の恋人もプラスになってほしい
お互いマイナスになる関係にはしたくない

今の恋人に対して思うのは
依存や憎しみながら愛することは
もう繰り返したくないということ
愛だけで愛したいということ
元彼との3年を超えたいということ
時間的にも質的にも

出会いと別れの季節だからか
春は様々な記憶が巡るし
色んな過去や未来を
いつも以上に考えることが多い
そんな時間が多いから
無駄が多いねと私はよく言われる

来年の今頃は
今の恋人と居られないかもしれないし
ひとりかもしれないし
他の誰かがいるかもしれないし
生きてるか死んでるかもわからない
そんなのは当然予期出来ることではないけど
それでも
来年も一緒に居ようねって
今は今の恋人と笑いたいし笑ってほしい

未来の約束が守れなくても
誰も責めるつもりは無いし
そうなってもそれは仕方のないことだと思う
それはそれまでのことだったってのが
事実でしかないのだから 
勿論それまでのことになんてしたくはないけどね

大切な人と約束をしたこと
果たせても果たせなくても
来年の私は思い出すだろうな
また四月が来たよって
ギブスを聴きながら
嫌いな季節に咲く花を眺めながら